映画『バベル』より、「グローバリズムと家事労働者」

「モロッコからの電話」

女優の菊池凛子が出演して評判となった映画『バベル』、日本では2007年に、上映中一部シーンで観客に気分が悪くなる人が出たということでも話題となった。
 
この映画では、アメリカ西海岸のサンディエゴ、モロッコ、メキシコ、東京を舞台に、オムニバス形式で、テンポ良くストーリーが展開する。

『バベル』の冒頭は電話のシーンだ。アメリカ人夫婦の夫(ブラッド・ビッド)がモロッコからの電話で、事態が急変して、帰国予定が遅れることを告げる。それをオロオロしながら応えているのがメキシコ人の家政婦アメリアという場面だ。

彼女は2人の子供の世話を任され、両親がいない間家を見守っている。彼女には息子の結婚式がメキシコで間近に控えていた。両親が予定通りに帰国しなければ結婚式に行けない、狼狽していたのはそのせいだ。しかしながら、モロッコの旅先で、妻が銃に打たれ重傷を負ったアメリカ人の夫は家政婦の訴えに聞く耳を持たない、、、、、。

アメリアは両親の許可を得ないまま、2人の子供を連れて、国境を越え息子の結婚式に出ることを決行する。しかし、帰路、事態は暗転する。国境の検問からアクシデントが発生し、アメリアは砂漠の中、子供たちを見失い途方に暮れる、彼女の嘆きの声が砂漠地帯でこだまする、、、、、。


「家政婦アメリア」

この映画を見ながら、改めて、現代家庭において重要な役割を担う家政婦アメリアのような家事労働者の存在に気づかされた。彼女は両親が旅行中のアメリカ人家庭で、家のことや子供の世話を任され、恐らく、日頃から家庭生活を陰で支えているに違いない。
 映画を見終わってから、ふと素朴な疑問が生じた。果たして、アメリアはいつ休暇を取るのだろう?不法移民として仕事をしていることが見つかれば本国へ送還されることはないのだろうか、、、、、、など。

「グローバリズムと家事労働」

現在、アメリカでは多数のヒスパニック系、フィリピン系のドメスティック・ヘルパーが、共稼ぎ夫婦や富裕層の家庭で、家事労働の大半を担っていると聞く。彼女らは、口コミで、正規・非正規のルートで雇用されているようだ。

また、世界の主要な経済・金融の中心地には現在、グローバルに地域を越え活躍する国際的なビジネスマンが多数住んでいる。各センターを移動する駐在員にとって、移転先での家事労働者の存在は彼らの生活に不可欠となっている。

このように、グローバリズムの進展と伴に現代の家庭の中でなくてはならない役割を担っているのが、世界各国に散らばる家事労働者の存在だ。ここ東京でも、広尾や六本木で、白人の赤ちゃんを乗せてベビーカーを引くフィリピーナのシッターの姿を良く見かける。多くは、外国の大使館や外国企業の役員がスポンサーとなって就労している出稼ぎの家事労働者だ。

現在、世界の各地で活躍する人たちを陰で支える家事労働者。彼女らの置かれた環境や家庭における役割について、これまで多くの関心を呼んできたとは言い難い。彼女らの生活や悩み、彼女ら自身の家庭、そして、母国の家族とのつながりはどうなっているのだろう、、、、。

グローバリズムが進展する現代社会において、ドメスティック・ヘルパーの実態はどうなっているのか、これからも様々な角度から考えてみたい。

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